木炭紙にインク+ガッシュ+アクリル絵具 – 970 × 645 mm

シュロモ・ミンツ(Shlomo Mintz)
「モーツァルト 2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネ」

 ミンツさんの実演は1990年11月18日のサントリーホールのリサイタルで聴いた事があります。席は2階前から3列あたりだったか、印象的だったのは、私の席の右隣が光栄にも当時飛ぶ鳥を落とす勢いの諏訪内晶子さんでして、(正確には諏訪内さんの席の両隣は空席でしたので、私、空席、諏訪内さんですね)それと練習の帰りでしょうか、開演直前にバイオリンをお持ちの方が何人か入っていらしたのを覚えています。
プログラムはモーツァルト、シューベルト、ラベルのソナタでしたが、音がたまらないぐらい柔らかく美しく、それでいてあの広い大ホールの隅々にまで音の放射が伝わっていて、ラベルのソナタなんてあなた、これが洗練というものかと呆気にとられました。極上の演奏会でした。
実演でこそ演奏家の本当の実力が分かる訳ですが、私のそれまで体験した演奏家の芸術性の範囲を遥かに超えていて、(と言っても僅かな体験ですが)何かミンツさんは同じ人間と思いませんです。お生まれになった時から何かを持ってらっしゃる?天才と一言では言い切れません。あの音楽は練習して学んで会得できるものではないと思います。バイオリンでプロを目指していなくてよかったと思いました 笑。アンコールではクライスラーの曲を飛び跳ねるように楽しそうに演奏しておりました。
表題の2つのヴァイオリンのためのコンチェルトーネは、ミンツさんが2004年に録音したモーツァルト バイオリン協奏曲集の中の一曲ですが、モーツァルトが17才の時の作らしく、これまたとても17才の青年の作曲とは思えなく、天才だからで済ますのはどうかと、才能のカケラもない私はいろいろと考えます。