木炭紙にインク+ガッシュ+アクリル絵具 – 490 × 640 mm
加門七海「墨東地霊散歩」
私は加門さんの大ファンでして、魅力的な著作に加えて親近感があるのは、私も加門さんと同じ東京の、俗に言う下町の生まれなので、価値観が近いのではないかなと勝手に思います。きっぷのいい、ともすればドキッとする切れ込みのいい言葉使いは、ある種の方には違和感があるかもしれません。
「墨東地霊散歩」は、お得意の怪談系は極力おさえて民族学に徹していますが、相変わらずの博識の社寺の紹介の中でびっくりしたのは、私が小学生の時毎日のように遊びにいっていた亀戸浅間神社の紹介でして、なんと室町時代の創建との事で、ここにある富士塚は弟橘媛命の笄が埋められていた塚だったとは!(戦火を逃れたそうです)子供で知らなかったとはいえ、神社内のそこら中を走り回っていました 笑
また、「墨東地霊散歩」の中でとりわけ胸に迫ったのは、中核でもあろう具体的な数字を出している悲惨な戦時中の空襲のお話です。命からがら生き延びたご両親とご親戚から戦時中の壮絶なお話を聞き、胸を痛めたのでしょう。昭和20年3月10日の東京大空襲では37万2千800世帯が罹災し、前後全ての空襲で、東京だけでも11万5千人以上の死者、負傷者は15万人以上です。私も子供の頃から何度も書籍、テレビのニュース等で聞き及んだこの数字は、改めて加門さんの怒りの文章で深く感じ入りました。
加門さんはこの事だけでも後世に伝え残しておきたいのでしょうね。と、いつもながらの自分流解釈です。