木炭紙にインク – 970 × 645 mm
つげ 義春「隣りの女」
つげさんの漫画を初めて拝見したのは定時制高校時代の時の学校の図書室のマンガ全集の一冊からでした。巻頭の漫画は「ねじ式」でした。夜の帰りの電車の中で読みまして、ショックでした。目が釘付けとはよく言ったもので、それ以来のつげファンです。ガロのバックナンバーを買い求め何度も何度も読み返しましたが、「夢の散歩」からは「つげ式」の虚無に入り込んでいるような気がします。
私は「ねじ式」辺りの絶頂期より「夢の散歩」以後の弛緩した作品の方が好きです。一連の「無能の人」などのグータラ駄目人間シリーズは、エロ場面だけでは無く、ストーリー、捨てゴマ、全てがつげファンを意識したサービス漫画だと思います。神経症などのご病気でお苦しみだとのことですが、流石、余裕があります。貧乏を切実に実感し落ち込んだときなど、私のようなグータラ駄目人間は、虚構の人物の物語とは言え、どんなにつげさんの漫画で救われたことか 笑。
さて「隣りの女」ですが、オヤジさんとミヨちゃんと、夜中闇米を買い出しに幌付きトラックで千葉の佐原へ向かうのですが、道中の夜景のコマの絵が出色の出来栄えです。黒のベタ塗りにいろんなものが塗りこまれています。物言う黒ベタの天才ですね。いや沈黙の黒ベタもあり、他の漫画の黒ベタも勿論シビれますし、捨てゴマのなんと見応えのあることか。ひとコマだけで絵になっています。
最近、つげさんの漫画のお陰でまたしても救われた事がありました。
2019年、大きい台風が日本列島に来て甚大な被害を被りましたが、我が家も酷い被害を受け、どうしたものかと、取り敢えず火災保険の風飄被害書類を出しましたが、私と同年輩の被害調査員の方が調査に来た時の事。どうやらその方は猫好きな方らしく、玄関を入る時にノラの黒猫が「にゃー」とお出迎えに、微笑みます。入って我が家のトラ猫がお出迎え、益々機嫌がいい感じです。2階に上がる途中の本棚に、「おっ、懐かしいなぁ、つげ義春だ!お好きなんですか?」ますます機嫌が良くなり、ついに、「この傷は見なかった事にします」が連発!出ましたよ。\(^o^)/
30年手入れひとつ出来なかった家が雨漏り無しの快適な家になりました。あっ、猫好きの方は猫様のお陰とおっしゃりますね。