木炭紙にインク – 490 × 640 mm
金子 光晴 「どくろ杯」
「夜があけてもまだ海のいろは砥の粉のように白っぽけていたが、昼近くから東支那海の重量のある、青蛇の背のような海いろに変わった。」
こういった美しい魅力的な文体で自然を描写できるのは、流石、詩人のなせる技ですね。詩人の目で見た異国の海が読者の脳裡にくっきりとイメージとして出現します。いたるところで魔法でも使ったのか?と幻惑するような言葉の配置の自然描写があり、読者を物語へと引き込みます。詩と、加えて過激を超えた切羽詰まったギリギリな旅と放埓な詩人の言動 。
私にとって最高の文学は「どくろ杯」「眠れ巴里」「西へ東へ」の三部作になります。晩年の金子さんは吉祥寺に住んでいて、映画館のエロ映画の公開の時は、ドテラを着込んで最前列に陣取っていたと、私よりずっと年上の友人の詩人が話してくれました。こんなところも好きですね 笑