木炭紙にインク+アクリル絵具 – 330 × 500 mm

「没後50年記念 岸田劉生展」東京国立近代美術館 1979

最近、YouTubeで山田五郎さんの「オトナの教養講座」の岸田劉生の動画をみました。こんな面白いものがタダでみれるなんて、良い時代になったものです。
ところで岸田劉生といえば、忘れようにも忘れられない1979年の没後50年記念展です。
当時の私は20代前半で、小僧の見識ですが、展示された油絵の質、量ともに圧倒されました。コテンパンにやられました。私の個人的な事ですが、早々に具象を捨ててよかったと自分を褒めました 笑

不思議なのは、例えば麗子像、図版でみると異様に不自然に形態をデフォルメしておりますが、現物を前にして鑑賞すると、徹底して細部まで考えぬかれた色彩と高度な筆遣いに気圧されるのか、作品そのものに生命が宿っているように、妖気も漂っているからなのか、デフォルメが気になりません。作品の持つ力に鑑賞者は呑まれちゃうのでしょうか。(私だけ?)

絵画作品は本物と対峙して、鑑賞してこそ評価し、感動できるものですが、岸田劉生の油絵は、図版では作品の良さがほんのわずかしか汲み取れないのではないかと思います。
劉生は上物の油絵をみるといいよ。と言いたいですが、美術館には極僅かしか油絵は置いてないんですよね 泣

お若い方で、この1979年展に行けなかった方に自慢しちゃいますが、この時の出品作品は殆どが個人蔵で、麗子像は代表的な傑作が出ていましたが、図版では見かけない肖像画が沢山展示してありまして、これらが来客をモデルに無理強いした有名な首刈肖像画でしょうか?どれもが上出来で不気味な迫力がありました。
劉生作品の価格の高騰を考えると、絵の所有者は展覧会の貸し出しを渋るのではないかと思います。(怖い相続税)その後の劉生展は展示作品が質、量とも低下しているように見受けられます。いい時にみれてよかったです。退館時はそれこそ後ろ髪を引かれる思いでした。

明るく、広々とした近代美術館の天井の高みの辺りを、塗り込められた肖像の魂が、久々の解放でか、大勢の入場者に浮かれてか、雀躍と飛び回っているようでした。
これマジです